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スチルトン、英国の伝統を訪ねて

2012年12月17日(月)

フランスのロックフォール、イタリアのゴルゴンゾーラとともに世界3大ブルーチーズといわれ、またThe King of Cheese と称賛されるスチルトン。今回はスチルトンと共に英国の伝統を足早に訪ねた2日間の旅をご紹介します。

今回の旅は、ロンドンを起点として、車で西へ170km、そこから北へ250km上がり、そして南東のロンドンへ戻るという英国中南部をトライアングルに駆け抜けた旅でした。
その慌ただしいチーズ旅行を、不平もいわず終始笑顔でナビゲートして頂いた英国紳士の Glyn Woolley 氏と彼の忠実な秘書達に感謝します。

1. ロンドンからマナーハウスへ

Room:部屋
ロンドンのヒースロー空港へ迎えに来てくれていた氏とその家族と共に、自動車専用道路(M4)を一路西へ。予想していたとおり、あの英国特有の空模様と冷たい冬の雨。それに加えて荒涼とした景色が広がるなかを平均時速150kmで、初日の目的地 Castle Combeに向かう。今回は、直接スチルトンの生産地に向かわず、せっかくの英国を知ろうと多少の寄り道をしながらの旅なのです。今日の泊りはマナーハウス。

Manor House:マナーハウス
マナーハウスとは「荘園の館」というくらいの意味で、その昔、地域一帯を治めていた荘園領主が住んでいたお城のようなものなのです。現代では、こういった当時の貴族の館がホテルになり開放されています。内部はもちろん 往時をしのばせるままに維持され、英国特権階級の生活を彷彿とさせています。英国でもっとも美しい村 Castle Combe(キャッスルコム)のなかにあるこの館は14世紀 につくられました。境界を川が流れ、森と庭園に囲まれた 26エーカー(約8万平方メートル)の広大な敷地に圧倒されます。

Dinner:ディナー
ディナーは夜の9時から始まりました。ヨーロッパではこの時間くらいからのディナーは珍しいものではありません。当然のごとくフルコースの伝統的料理がふるまわれ、最後はチーズの盛り合わせデザートで締めくくるというもの。イギリスにしてもフランスにしても締めくくりのデザートにチーズというのは、我々日本人にとっては多少重く感じます。それにこの量。そして、ディナーを楽しむには余裕のある会話が必須とは分かっているものの、終わったのがなんと深夜の1時でした。

Room:部屋
このベッドルームをご覧下さい。まさに英国のトラディショナルを体現しているようなもの。ラルフローレンのインテリアを想像してしまいました。ダブルサイズのベッドには縫いぐるみが歓迎してくれています。手にとると首のところには「僕をもっていかないで」と書いてありました。

マナーハウスの宿泊費は約2万円、ディナーが7~8000円です。もし英国へ旅行されることがあればぜひ泊ってみてください。ゴルフ、狩猟、クリケット、テニスといろいろなレジャーも楽しめます。

The Manor House
address: Castle Combe Chippenham Wiltshire SN14 7HR
Tel:01249-782206 Fax:01249-783100(Guest)

2. ローマからの道

2日目、マナーハウスに別れを告げて、一路北へとLeiscestershire(レスターシャー県) のHarby(ハービー)を目指します。午後には待望のスチルトンをつくっている工場見学。北へ延びる道は、ローマ時代にローマ軍が行軍と物資輸送のためにつくった軍用道路です。そのせいか、道はまっすぐに連なっています。ローマ時代と聞いて、ヨーロッパの歴史を改めて感じロマンティックな気分になりました。街道沿いには、ところどころ当時の温泉(スパ)が残っています。

Stow on the Wold「木のない原野」
家々や橋など街の建造物は、一種類の花崗岩系の石で統一し伝統の景観を保っているのです。イングランド中部の街に雨が上がり、薄日が静かに差し込んできました。私達も、慌ただしさを忘れたつかの間の時間を過ごしています。

Moreton in Marsh「湿地にあるモアトン」
北へ10km 離れたとなり街です。ここでは一転して朝市の賑わいがありました。この街の朝市は近隣ではつとにです。雨があがった後、市民がくりだし、活気に包まれていました。

3. 秘伝、スチルトンチーズの真髄

スチルトンチーズ
原産国:イギリス
世界のチーズ専門家により「チーズの王様」とか「世界3大ブルーチーズ」と 称賛されるスチルトンは、200年以上昔、ロンドン北方スチルトン村のベル ・イン(旅館)で旅人に初めて販売されました。今日、このスチルトンはレ スターシャー(州)、ダービーシャー、ノッティンガムシャーの3地方だけで のみ造られるものを指し、スチルトン製造協会に加盟する6社にしかその権利 は与えられていません。

ブルーチーズ
シャープでぴりっとしており、チェダーチーズのように脂っこく、芳醇な香りがします。ロックフォールほど塩辛くなく、ゴルゴンゾーラよりクリーミィではありません。他のブルーチーズより水分が低いために固く、ぼそぼそとしたボディに青かび模様が入っています。

青い葉脈の入ったチーズ
ブルーチーズが他のチーズと大きく違う点は、かび熟成タイプのチーズなので、かびの添加が必要なことです。しかも、表面から熟成させる白かびチーズと異なり内部熟成タイプであることから、熟成が進むにつれて、かびの繁殖と共に内部に大理石のような筋模様ができてきます。この青かびのはえ具合が、種類によって異なり、それぞれのブルーべインドチーズの味の特徴を形成します。

世界3大ブルーチーズ
スチルトン(イギリス)、ロックフォール(フランス)、ゴルゴンゾーラ(イタリア)

ミルウエィ・フード社 Millway Foods Co.
私達チーズクラブが輸入しているのもここミルウェイ・フード社のスチルトン。昼に着き、昼食をとって見学。付き添って解説してくれたのは、工場長、というよりもマイスター(親方)という雰囲気の Richard Davies 氏。スチルトンづくりは、こういった親方によってその秘伝の製法が引き継がれていくのです。

これが熟成の過程です。

青かびの増殖過程を確かめる。

ランチ
近くのパブで昼食をとりました。見よ、このランチを。この肉とこのブルーチーズの量。チーズはもちろんスチルトン。12インチ(30cm)のプレートです。聞いてみると、このランチは近所の牛飼い達が食べていたものだそうです。

4. Village of Stilton

A1 を下りスチルトン村へ。この道はそのままロンドンへと続きます。短かった旅も、このスチルトン村でおしまい。スチルトン村とはその名前が示すとおり、発祥の地です。それは今から250年ほど前にさかのぼります。

 

Bell inn, Stilton
743年、Cooper Thornhill によって購入されたこの宿は、初期スチルトンチーズのビジネスにおいて重要な役割を担い、19世紀に入りスチルトンチーズの取引を左右することとなる。
Cooper Thornhill はこの宿を起点に、ロンドンでスチルトンチーズの販売を拡大し、後に「King of Cheese」として世界的な名声を獲得するようになった。写真は、今日イギリスのどこにでも見られるスーパーのチーズ売り場。普通のスーパーでこれだけの種類と量を揃えているのです。

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